タグ別アーカイブ: ビジネス

居酒屋の苦戦を読み解く3つのポイント!

20140827(水)日経MJ1面より

「早い!安い!ちょい飲み旋風」のタイトルのこの記事。グラスを片手に会社の愚痴などで盛り上がるのは居酒屋やバーではなく、身近なファミレスや牛丼屋さんでの「ちょい飲み」が増えているとのこと。この記事から居酒屋業界に関して3つのポイントから読み解いてみました。

①ちょい飲みの実態

タイトルに惹かれて記事を読んだところ実際に今、以下のような状況が見られているようです。

「バーミヤンでのボトルキープ 」
「吉野家でホッピーを飲みながら牛皿をつまむ」
「ファストフードでサークル飲み」

事実、バーミヤンでは7月の既存店のアルコール売上高が前年同月比で4%も増加しているとのこと。
ライフスタイルってこんな感じで時代とともに変わっていくんだなとしみじみと感じてしまいました。 

②業界への影響について

結論から申し上げると、居酒屋が安売り以外で対抗する策を見つけて集客に成功すれば業界にとって追い風であると私は見ています。企業が安い製品・サービスを求めるお客様だけの訴求に答え続けていくと、皆様がご存知の通り安売り合戦が起こります。安売りの危険性はここでは詳しく説明しませんが、企業の利益を直接下落させる原因になります。

今回のケースでは、バーミヤンや吉野家といった企業がお酒を飲める場を提供しており、彼らにとっては単価を上げることに成功していると言えるでしょう。確かにこれにより、居酒屋で安い飲みを求めていたお客様はそちらに流れて行くでしょうが、ここで一旦お客様をとられた居酒屋が安売りでお客様をとり戻すのか、差別化するサービスを見つけて新しいお客様を掘り起こすのか?で今後の居酒屋の行く末が変わってくると思います。安売りで対抗しても、ファストフードでの飲みに慣れたお客様が戻ってくることは非常に難しいのではないかと私自信は感じています。それよりも、新しいサービスで単価を上げて新しいお客様の集客に成功すれば、業界全体の利益の底上げに繋がり、より健全な業界の成長に繋がるものと信じて、今後の動向をチェックしていきたいと思っています。

③どこでデータをチェックしたらいいの?

このようなデータを今後も知りたいという方はどこを見たらいいんだろう?と思っている方も多いはず。
一般社団法人日本フードサービス協会という会社が毎月情報を発信しているので、ご確認下さい。

ご参考までに以下が2014年7月の外食産業データです。 

居酒屋は売上高、店舗数、客数、客単価ともに前年を下回っており、価格を下げてもなおお客様を取り戻せていない状況がよく分かると思います。 データを見る力をつけることが出来ればこのように色々な状況が見えてきて分析をすることが出来るようになります。上述したようなサービスを提供できる居酒屋にいち早く注目することができ、その会社の株を買う事が出来れば株の上昇に繋がるかもしれませんね。

NewImage

 

クルーズ業界を読み解く3つのポイント

2013年から景気の回復に伴いレジャーとしてのクルーズが新聞やテレビなどで取り上げられるようになってきました。

クルーズ業界を3つのポイントから読み解いてみましょう。

 

①日本のクルーズ業界の現状

日本を運行する船舶の乗船人数については国土交通省が毎年4月の下旬(25日頃)に詳細データを発表しています。それによると

(1)2013年のクルーズ旅行利用者が、過去最高の23.8万人(2012年は21.7万人 前年比9.9%(2.1万人)の増加)となった。
 
(2)外国船クルーズ乗客数も2013年6月に「ふじ丸」が運行を停止したものの、外国船社による日本発着外航クルーズが本格化したことから、過去最高の13.8万人(2012年は12.0万人 前年比14.8%(1.8万人)の増加)となった。
 
(3)外国船社が行う短期(3~7泊程度)の外航クルーズを利用する者が増えたことから、外航クルーズの平均泊数が、9.3泊から7.4泊(1.9泊減)と短くなった。

(4)今回は、日本発着の外航クルーズを利用する外国人数について、初めて調査が行われた。日本発着の外航クルーズを利用する外国人数は6千人となった。

(5)一方、日本発着の外航旅客定期航路を利用した日本人乗客数は、円安等の影響により、前年比45%減の18.5万人になった。

 
②世界と比べると
 

日本のクルーズ人口は過去最高になったとはいうものの、総人口の比率からするとたったの0.2%にすぎません。
世界で最もクルーズ人口が多いのはアメリカ・カナダ(北米)で、クルーズ人口は約1,170万人(総人口の3.3%)とその乗船人口は圧倒的です。
その次に続くのは欧州で、イギリスでは 170万人(総人口の2.5%)、ドイツは150万人(総人口の約1.9%)と、人口比率でみると日本の10倍以上の比率となっています。


日本でクルーズが流行るには今後、日本でクルーズが庶民のレジャーとなり、仮に日本が欧州並みの1%まで乗船人数が増えれば100万人の市場になります。そうなれば、更にクルーズ事業に乗り出す会社も増え、価格競争が起きてくればもっともっと庶民にも手が届きやすいレジャーとなります。そのためには、まず日本人の休日の取り方に変化が必要です。クルーズにはどうしても数日間の休みが必要。中期の休みがとれるようような社会の仕組みが出来てくると、クルーズにも足を運びやすくなります。
 
 
③投資の観点から
 
日本でクルーズ事業を行っている会社は飛鳥を運行する郵船クルーズ、これは日本郵船(証券コード 9101)の子会社です。
にっぽん丸を運行するのは、商船三井客船株式会社で、これは商船三井(証券コード 9104 )のグループ会社です。
株価へのインパクトを考えてみましょう。
日本郵船の2013年度の業績を見てみると売上高は2兆2,372億円。このうち、郵船クルーズやCrystal Cruise社からの売上で452億円と約2%ほどの影響しかないことが分かります。経常利益率も全体の1.2%程度です。すなわちクルーズ事業が今人気!などと騒がれたからといって、大きく日本郵船や商船三井の株価に影響を与えることは少ないと考えられます。
 
 
参考
国土交通省がデータを公表しています。

「水辺ビジネス」を読み解く3つのポイント(日経MJ 20140915 月の記事から)

水辺ビジネスとは川沿いや河川敷で行うビジネスのこと。川下りなどの川を利用したアクティビティだけでなく、最近では飲食店など自然の間近での心地よさを売りにするビジネスも増えてきました。これには、2011年度から国による規制緩和があったことが上げられます。

水辺ビジネスを読み解く3つのポイント!

 
①メリットとデメリットは?
水辺でビジネス(飲食店)をすることのメリットとしては集客効果の高さが上げられます。水の流れを横目に、食事や休息を楽しむことを好む人は多いでしょう。デートなどに使用されることでも高い集客効果を見込めます。日常とは違う雰囲気を味わいたい人に人気です。
デメリットは、天候に左右されやすいこと。大雨などの悪天候時では川沿いを避ける人が増えます。また、商業地という認識がまだ浸透していないためにメリットである高い集客効果を得るためには店を認知させる必要性があり、繁盛店にするためには経営者の手腕が必要になってきます。
 
 
②具体例からの成功のカギを読み解く
東京都台東区の隅田川沿いに、7階立ての「MIRROR(ミラー)」があります。運営するのは全国でカフェ、スウィーツ店など約46店舗(2014年9月現在)営むバルニバービ食とアートを創造する複合商業施設としてオープン。オープンは2011年4月で築40年の倉庫(約2000㎡)を約5億円で購入して、2億円かけてリノベーション。6フロアにビストロ料理やバーなど3タイプの店が入っており、1日の集客はおよそ600名。年間売上は4億円。
 
社長が出店を踏み切ったポイントは以下の2つが期待できるからとのこと。
「水辺の癒しの効果」
「ロケーションをずっと確保できること」(目の前にスカイツリーが見える)
 
成功のカギは以下の3つ
(1)ハード面を水辺ビジネスに合わせて作り込んだこと
川を面にした壁は全面ガラス張りに、大きなオープンテラス。ビニールカーテンとヒーターを用意し、大雨の日以外はいつでも使える状況を作り上げたようです。
 
(2)ソフト面でお客に日常とのギャップを提供していること
内装や家具にはアジアのリゾートや北欧調の家具で、下町の風情とのギャップを出してお客様にインパクトを与えています。
 
(3)周辺と安全への気配りの徹底
以前は静かだった川沿いにお店を出す場合に最も気をつけなければならないのは騒音リスク。とくにこの店ではオープンテラスの形式にしているために、大きな声は近所に響き渡ってしまいます。外での営業は23時までとし、張り紙や直接の声がけでお客様にも配慮して頂いている様です。
また、突然の暴風などで設備が壊れてしまうことなども考えた設計や、壊れた設備を買い替えるリスクも考えた収支計算を行っているようです。
 
このようにして水辺ビジネスを成功させたバルニバービのグループ売上は以下のように成長が加速しているようです。
30億3000万円 (2011年7月期・単体)
36億4000万円 (2012年7月期・単体)
51億8000万円 (2013年7月期・連結)
 
 
③水辺ビジネスと聞いて今後どんなポイントを見ておけばよいか?
 
飲食店を出す場合は上記成功のカギの中でも特に③の周辺への気配りの徹底ができているかはチェックすべきでしょう。
 
また、規制緩和の動きはますます加速していき、大手の会社も商業施設に乗り出してくることは間違いありません。
水辺に資産を持っている会社の価値は上がることが予想されます。
 
住友倉庫(証券コード 9303)は実際に道頓堀沿いに「南堀江キャナルテラス」オープンして約10億円を稼ぎだすとのこと。
水辺ビジネスが加速していると報じられた時などは、水辺に資産をもつ企業の株をチェックしてみることをオススメします。
 
 
ちなみに
河川敷の大半は公有地。これまでは防災の面から民間企業が営利目的で利用するのは限定されていたのですが、2011年度から全国で可能になりました。規制緩和の流れを作ったのは大阪。5年ほど前から官民が連携して水辺の活用を推進。北浜テラスはその走りです。外国人や若者の集客に成功し、2013年度の利用客は8店舗で約6万人と2012年度に比べ倍増したようです。