20140924(水)の日経MJの一面では、スポーツウェアを扱うゴールドウインに関する記事がありました。「チャンピオン」や「ザ・ノース・フェイス」などを取り扱う会社というと、皆様も身近に感じるのではないでしょうか。今回の記事では1975年の米国チャンピオン社とのライセンス契約開始以来初めて、チャンピオンの新製品を発売しないことを決定したとの記事がありましたので、3つの視点から読み解いてみたいと思います。
①ゴールドウイン社について
ゴールドウイン社はミズノ、アシックス、デサントに次ぐ業界4位の規模。競技スポーツの他にアウトドア製品が充実していることが特徴として挙げられます。景気の回復とともに、オリンピック決定後はスポーツへの機運も高まっていることから業績は回復しているものの、消費者のニーズの変化が激しく、スポーツブランド以外のアパレル企業の参入もあり、厳しい競争環境におかれています。
アシックス 売上高3294億円 営業利益265億円
ミズノ 売上高1832億円 営業利益56億円
デサント 売上高1099億円 営業利益62億円
ゴールドウイン 売上高548億円 営業利益22億円
②新製品を販売しないという意思決定について
ゴールドウイン社は2014年7月末に開いた来春夏の事業方針説明会で「もはやジャージは大衆のトレンドから脱落した。根底から変えないといけない」として、チャンピオンブランドの新製品を発売しないことを決定したようです。チャンピオン事業の売上高のうち4割がジャージの売上であり、新製品を販売しないことで15%までジャージの売上比率は下がるとのこと。
この決定、私自身は非常に優れた判断だと感じました。ジャージを昔と比べて着なくなったと思う人は多いのではないでしょうか?私自身もその一人です。ライセンス契約があるから商品を売り続けなければならないという意識にとらわれると、成長企業に必要な要素の一つである「分析」がおろそかになります。実際にゴールドウインの事業部長の方も「誰がどんな時に使っているか分からないまま売り続けては付加価値が出せなくなる」として、製品の見直しを決めたようです。スポーツ選手が着たいジャージという原点に振り返ることで、既存の強みを活かした商品戦略をとっていくことは同社の再成長を加速させる要因になると考えています。
③ゴールドウインの株価について
以下にゴールドウイン社の過去2年の株価を示します。また、比較のためアシックスの株価を載せました。オリンピックが決まった2013年9月以降の株価に歴然の差があることがお分かりでしょうか。ゴールドウインは横ばいを続けるなか、アシックスは右肩上がりに上がっています。やはり、業績が伸び悩むジャージの事業を抱える会社よりも、スポーツに特化しているアシックスの方がオリンピックをテーマに株が買われていたという事でしょう。しかし、直近でゴールドウインの株価が8月から一気に上昇していることがお分かりでしょうか?これ、実は自社株買いという会社自身が自社の株を買っているという理由が一番大きいのですが、7月末に開いた事業説明会のジャージ事業へのテコ入れに期待している投資家も少なからずいるのではないでしょうか?同社の売上のうち約40%はアスレチックスタイル事業と呼ばれるチャンピオンを主軸とした事業です。会社の事業方針であったように戦略を見直して、この事業の成長が見えたときはゴールドウインの株価は更に上昇していくかもしれませんね。
ゴールドウインの株価
アシックスの株価